豊島逸夫の手帖

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為替監視下の利上げが誘発するドル高円安

2016年5月19日

米財務省は日本を為替監視対象国に入れ、円売り介入を牽制したが、FOMC議事要旨が、市場の円売りを誘発した。米国政府のドル安政策に対して、FRBは中央銀行の独立性を堅持したようだ。米国企業へのドル高リスクより、金融正常化=追加利上げを重視する結果になっている。

今回発表された4月FOMC議事要旨の中で、ドル買い円売りを誘発した箇所は後半の一節だった。キーワードはmost(殆どの)。この単語は、参加者の同意度を示すときに使われる最も強い表現だ。

「殆どの参加者が、第二四半期の経済成長が改善して、労働市場の改善が続き、インフレ率も2%目標に近づけば、6月にFFレートを引き上げることが妥当(appropriate)であろうと判断した。」

これほど具体的に6月利上げの可能性が議論されていたことが、市場にはサプライズであった。

更に、「世界的金融状況のリスクは後退したとの点で一般的な合意をみた。」との一文も、利上げへの自由度が高まったことを示唆と受け止められた。

この議事録ににじむのは、ハト派イエレン議長と他のFOMC参加者との温度差だ。イエレン氏はニューヨーク・エコノミック・クラブ講演で利上げに極めて慎重なハト派的トーンを強調した。この発言は、今回の円上昇トレンドを加速させる大きな要因となった。いっぽう、地区連銀総裁たちの多くは、6月利上げが議論の対象から外れたわけではないことを繰り返し語っていた。直近でも、サンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁、アトランタ連銀ロックハート総裁らが相次いで「6月利上げの可能性が消えたわけではない。」と発言していた。市場が見る6月利上げ確率が0に近い数%台にまで下がってきたことに対しての牽制と理解された。

結局、内部調整を重視するイエレン氏としては、ハト派的自説を語りつつ、FOMC内の多数派意見に従う姿勢を見せたことがうかがわれる。

更に、大統領候補トランプ・クリントン両氏とイエレン氏の間にも温度差が露呈した。

自国雇用維持のためのドル安を支持する大統領候補に対して、イエレン議長はドル高リスクを認めつつ、あえてドル高を誘発する利上げを優先させる構えなのだ。トランプ氏がイエレン議長再任を否定したことも納得がゆく。

なお、議事要旨が発表された18日日本時間午前3時から、株式・債券・外為・商品の各市場が一瞬にして様変わりの反応を見せた。サプライズではあったが、導火線もあった。前日発表された4月米消費者物価指数が、前月比0.4%上昇したことだ。2%インフレ目標へ接近との印象を与えていた。

4月小売売上高が前月比1.3%上昇したことも注目されていた。

とはいえ、4月雇用統計で、平均時給は改善したものの、非農業部門雇用者数が16万人増にとどまるなど、まだ総じてマダラ模様である。

英国EU離脱国民投票のリスクもFOMC議事要旨に明示されている。

6月利上げに大きく傾いたというより、出来れば6月に利上げしたいとのFOMCの意向が確認されたというべきだろう。

外為市場では18日議事要旨発表直後からヘッジファンドが一斉に円買いポジションを巻き戻し110円台となった。しかし、6月FOMCにむけ、6月2日OPEC総会、同3日米雇用統計からが「第四コーナー通過」だ。それまでに、どこまで円安にもってゆけるか、注目されるところだ。

このドル高を受けて、金は1260ドル台にまで急落。やはり金利がつかない金にとって利上げは天敵。ただ、欧州と日本はマイナス金利なので、金利がつかないことがメリットになっている。一方、米国がマイナス金利になる可能性は無いとはいえないが、まだ現実味はない。

一昨日、「予測の反省会」番組をやりたいと、ブログにも書き、ツイッタ―でも呟いたら、えらい反響でね。要は、賛成の声。しかし、業界やアナリストたちは、尻込みする。「豊島さんは、独立系だから、なんでも本音を言えるけど、我々は組織の人間だから、勘弁して。」だと。私は、組織にいたときから、本音をぶちまけて、社内では顰蹙かっていたけどね~(笑)。 見張り役の「広報担当」がいちいちチェックを入れてきて、こっちは、無視したので、社内の評判は悪かったな。いつでも辞める気でいたけどね。

パネルディスカッションで一緒になるトレーダー・アナリストたちも、楽屋に戻ると、本番とは全く違う本音を語り出したりするもの。「豊島さん、うらやましい。本音ぶっちゃけで語れて。」「じゃぁ、会社辞めな!」「いや、あの、その、当方にも色々事情あって、ムニャムニャ。。」てな会話で、いじってる(笑)。

今日のうまいもん写真は、本場もののデカい白アスパラ。

シンプルに茹でたのが一番。旬の甘さが香る。

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そして、涼しげな季節の生菓子。食べるのがもったいなく感じるほど、きれいな仕上がり。

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2016年