豊島逸夫の手帖

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ジム・ロジャーズ氏は円高派、原油はロング

2016年6月15日

「円は多くの通貨に対して上昇する。」

9日NYでのジム・ロジャーズ氏と対談後、帰国。今週に入り105円台まで円高が進行したところで、彼の相場観がメールされてきた。

NYの対談では、相対的に安全通貨としてドルが買われると述べていたが、円もやはり買われるとの見方だ。ドルと円の相対評価では、円が勝ると見ているようだ。

そして、やはり、Brexit(英国のEU離脱問題)には強い警戒感を示している。

ジム・ロジャーズ氏といえば、1970年代にジョージ・ソロス氏と共同で元祖ヘッジファンド「クァンタムファンド」を立ち上げた。

その後、1990年代にソロス氏はポンド売り攻勢に勝負をかけ成功をおさめた。英国通貨当局とは戦いの因縁があるのだ。

「Brexitともなれば、ポンドは暴落。ドルと円が買われる。」

こう語るときのジム・ロジャーズ氏の目は、「二人の娘の父」から「ヘッジファンドのレジェンド」の表情に豹変していた。

EU離脱を問う英国民投票は、ヘッジファンドに願ってもないチャンスを与えている。

しかも、今回はAIによるアルゴリズム売買という新兵器で重装備している。1990年代と異なり、勝負は数時間でつくだろう。

離脱賛成なら100円、離脱反対なら110円。これが、NYで会った多くのヘッジファンドが共有する相場観だ。オーバーシュートして98円あるいは113円程度も視野に入る。いずれにせよ、その絶対差は10円以上。

通貨当局の立場で見れば、ヘッジファンドとの戦いというより、AIとの神経戦という、未体験ゾーンである。

これまでの「市況の法則」はあてはまらない。

場合によっては中銀介入も絡む仕手筋たちの空中戦となりそう。そんなとき、素人衆は敢えて近づかないほうがよかろう。

なお、原油価格について同氏は筆者へのメールで「ここまで、ややこしい形で底を形成しつつある。確認原油埋蔵量は減少している。例外はフラッキングだが、フラッキング・バブルも終わった。下値を試す局面もあろうが、基本的にはエネルギー関連は買い持ち(ロング)すべき。空売り(ショート)はダメ。」とのアドバイスである。

そして、下の写真は、昨日ブログに引用した日経一面記事の表。

長い青色の線がNY金。分かりやすいね。

2364a-2.jpg

私の記事中コメントは「ドルの代替通貨として金が見直されている」。

そして、閑散として寂しいNYMEXフロアー。

2364b.jpg

電子取引(GLOBEX)が主体となり、ピットは形骸化。

今年中には、この場も全面閉鎖され、完全に電子取引に移行するようだ。時代の流れから言って、よく、ここまで、場立ちがもったな、とも思うよ。

もう一つの写真は、たぶん、これが最後となる、私のフロアー入場許可証。

2364c.jpg

個人的にスイス銀行時代はじめ、様々な思い出がしみついた場ゆえ、センチメンタルな気分になったよ。おそらくリストラされる場立ち達は、次の職をどこに求めるのかな。彼らが、求職活動すれば、雇用統計上「失業者」にカウントされ、求職を諦め国へ帰れば「失業者」とは見做されない。ここに雇用統計失業率の数字のマジックがある。

最後に、Brexitで安全資産にマネーが流入して金価格上昇。同時に、安全資産として独国債が買われ、10年物までマイナス・イールドに。

そこで、相対的に、金のゼロ・イールドのほうが高い=ハイ・イールドになってしまった珍現象。金が相対的とはいえ、ハイ・イールドかよ(笑)。


2016年