豊島逸夫の手帖

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「不気味」な円高、米国市場も不安視

2016年4月8日

「円に何が起きているのか。」

「この円急騰はミステリーだ。」

米利上げ観測後退によるドル安・円高は理解できる。しかし、一気に107円台までの円独歩高は、「想定外」。

相対的に「安全通貨」とされ、リスクオフで買われやすい通貨だけに、その通貨価値が異常な急上昇を演じると、市場は「なにか我々が知らない不安要因が背後にあるのか。」と疑心暗鬼になる。

7日のNY株式市場では、極東の世界第3位の経済大国に何か起きているのか、との漠とした不安心理がリスク回避の売りを誘発する一因となった。

このまま105円に突入すれば、日本発の世界株安連鎖さえ絵空事とはいえない様相だ。

皮肉なことだが、FOMCが「海外不安要因」を重視して、利上げに慎重な姿勢を明らかにしているので、ドルが売られ円が買われたのだが、その円高に歯止めがかからなくなることで、新たな「海外不安要因」が勃発しかねない。

特に、中国・原油リスクが一定の小休止状態になるだけに、不気味な円の動きが、相対的に目立つ。

中国の外貨準備が足元では増加に転じているので、人民元不安が若干後退しているだけに、「当面は、中国より日本をウォッチ」との声も聞かれる。

原油も35~40ドルのレンジで、当面は煮詰まってきている。

いっぽう、投機筋から見れば、心理的抵抗線を突破した円相場は、恰好の草刈り場に映る。高頻度取引を駆使して、一気に円買い攻勢をかけている。

安倍首相が、伊勢志摩サミットを控え、通貨安競争は控えることを語り、日銀もマイナス金利導入が結果的に投機的円買いを引き起した直後ゆえ、「介入できない」とばかりに足元を見られている。

市場の不安心理が強まれば、強まるほど、ボラティリティーは上がるので、投機筋にとっては「魅力的」な市場にもなるのだ。

「安倍首相も、まさか、伊勢志摩サミットが、テロ対策を試され、急激な円高を止められない成り行きになることは、想定していなかっただろうね。」

奥さんが日本人のファンドマネージャーの呟きが印象的だった。

それにしても、今の相場が、パワープレーに席巻されていることを、あらためて痛感する。

コンピューターを駆使した力づくの集中的円買いで「アベノミクス防衛線」を崩してしまえば、そこに新たなレンジが事実上形成されてしまう。

「説明が旨くても、相場には勝てないよ。」

後講釈など、なんとでも言えるとの姿勢だ。

例えて言えば、日本型の丁寧に理論を組み立て、パスをつなぐ戦法は、海外市場では通用しない。

一日本人としては、この人たちに日本経済が揺さぶられているかと思うと、高頻度取引規制論への共感も禁じ得ない。

アベノミクスも、思わぬ展開で、正念場を迎えることになった。

NY金価格はドル安で1240ドルまで上昇したが、円高のスピードがはるかに優るので、円建て金価格は下落。異常な市場環境だが、円建て金価格には割安感を感じる。

当面、金価格より為替が重要だね。

さて、私がときどき呼ばれる、ABC朝日放送の土曜朝9時半からの90分ライブ情報番組「正義のミカタ」が、今週から名古屋地区でもメ~テレで流れることになった。明日土曜日は、たまたま私の出番で、担当は「パナマ文書」。名古屋地区の読者には見て欲しいよ。

吉本芸人と「エンタメ系エコノミスト」豊島のバトルを(笑)。

本稿は、マスターズを横目で見ながら書いてます~~~。

松山ガンバレ!

それにしても、バドミントンの金メダル狙える選手が、とばく事件にからみ、リオ絶望になったことは、情けなく残念。。。。

2016年