2016年11月15日
現状の金・プラチナは下げ過ぎ。その理由は、貴金属だけ見ていては分からない。マクロの視点で、以下に詳述した。
ドル買い円売りの宴、たけなわで中締めも
ドルインデックスの水準が100の大台前後まで切り上がってきた。
この5年間のグラフを見ても、100がレンジの上限になっている。
市場もドル高の負の面を意識し始めた。
まず、なんといっても、新興国通貨が「惨状」ともいえる下げっぷりである。ここでFRBが利上げに踏み切れば、新興国からのマネー流出速度が危機的レベルに達しかねない。保護主義の最大の犠牲者も新興国となる。
そもそも、現在のドル高は、トランプ氏のインフラ投資「観測」による金利高が誘発した現象だ。しかし、その財政政策の具体的内容が決定され実行されるのは、まだ先の話だ。現在は、超低金利時代が続くと見込んでいた投資家たちが、虚を突かれ、慌てて債券の一部を手放し、株式にシフトさせている段階である。金融政策ばかり見ていた市場の視点が急に財政政策に移ったものの、投資家たちは中央銀行主導型の相場展開に慣れきってしまい、頭の切り換えに手間取っている。トランプ氏勝利のサプライズに動揺した投資家心理が、金利高・ドル高ペースを増幅させている。
しかし、ドルインデックスが100の大台に達すると、さすがに市場には先走り過ぎた、との反省も芽生えてくる。
トレンドフォロー型のヘッジファンドには、ここぞ草刈り場と張り切り、ドル買いモメンタムに乗り続ける目論みが透ける。彼らからは「ドル円は115円を目指す。」と囃す声も聞こえてくる。
しかし、その他の市場参加者は徐々に冷静を取り戻しつつある。
特に、原油価格が下落基調に転じたことは、ドル高の影響ともいえるが、結果的にリスクオンに冷や水を浴びせる可能性を秘める。人民元安も不気味である。イタリア総選挙が実質的に英国型国民投票と化すシナリオもある。いずれも、リスク許容度が低いタイプのマネーが、債券市場に里帰りするキッカケになりかねない。
更に、トランポノミックスという新語に触発された市場の高揚感が一巡すると、投資家たちも「いずれ累積財政赤字がドルへの信認を毀損させるは必至。」と自問自答を始める。
これまで市場の喧騒にかき消されていた新興国市場からの悲鳴が、やっと耳に届き、我に返るかもしれない。
そもそも世界経済の長期停滞状況は変わっていないのだ。長期停滞論を標榜するローレンス・サマーズ元財務長官も、たまらず、FT紙に寄稿して、「大きな政治的イベントを受けた市場の初期反応は、あてにならない。」と断じている。
既に「このままでは、ドル高・新興国不安が12月利上げ判断にも影響しかねない。」と身構える市場参加者も少なくない。
ドル買いパーティーも、宴たけなわだが、中締めの準備も始まった。そろそろ、会場内の出口に近いところに参加者が陣取り始めた感がある。
さて、今週の週刊エコノミスト。9人の識者が読み解くトランプ・ショックでの筆者のコメント。
昨日は、日本政策金融公庫の前橋セミナー。高崎はスキーで通過する駅ゆえ馴染もあるが、前橋に行くのは初めてだった。在来線で3駅。それこそ合併すればいいのに、と思ったけど、きっと、地元には、そうはいかない深ーいワケがあるのだろうね~~。地元の中小企業の社長さんたち約100名。多くが海外進出しているので、国際感覚も鋭い。理屈ではなく、カラダで世界を体験している。後の懇親会で、一人一人と話すと面白かった。経済の実態が伝わってくる。東京商工会議所のセミナーと日本政策金融公庫のセミナーは、日本経済を支える中小企業の人たち相手なので、個人的にも、楽しみにしている。
そして、今日の旨い物写真は、鯛のお造りと、絶妙な鴨。@祇園らく山