豊島逸夫の手帖

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次の利上げは、トランプ氏次第、3月説も

2016年12月16日

2017年の利上げ回数が3回との想定に基づき、先読みする市場の関心は、次の利上げはいつか、早ければ3月か、との点にシフトしている。

もし、トランプ次期大統領が、施政方針演説で、より具体的に、インフラ投資、減税のパッケージを大々的に打ち出せば、市場のインフレ期待が急上昇して、FRBは再利上げに傾くかもしれない。イエレンFRB議長は今回の記者会見で、「高圧経済」について問われ、慎重な言い回しで、「インフレ・オーバーシュートも容認」との解釈に対して、やんわり釘をさした。急激なインフレ懸念の強まりは、歓迎しない姿勢が読み取れる。

イエレン氏とトランプ氏の関係も「FRB議長更迭発言」から、悪化が懸念されているが、当面は、「同床異夢」ながら、補完的な関係となりそうだ。財政の大盤振る舞いに対して、利上げで過熱を冷やす、というポリシーミックスは悪くない。

イエレン氏は、記者会見で、FRBの独立性についても問われたが、きっぱり、政治的介入を否定した。いっぽう、市場はトランプ氏が利上げについて、ツイッターでコメントするか否か、注目していたが、本件については何も呟かなかった。

昨日のトランプ・ツイッターは、大統領選挙でのロシアのハッキング疑惑について、ヒラリー氏が負けてからホワイトハウスが騒ぎ出した、とのつぶやきだった。あえて、イエレン氏が、利上げに関して後手後手に回っているなどの批判は避けたようだ。

更に今のドル高が続けば米国企業業績への影響も避けられまい。トランプ氏を支持するラストベルトの国内産業でも、雇用を取り戻すどころか、リストラを迫られるような状況になるかもしれない。これはトランプ氏としては容認できず、ドル高の要因である利上げを、ツイッターで批判することになろう。

長期的な視点にたてば、ムニューチン次期財務長官が語るように米経済を3~4%の成長軌道に戻すことを目指すなら、FRBには利上げ回数を減らしてほしいところだろう。いずれ、トランプ氏とイエレン氏も対決することになる可能性がある。

そこまで見越して、トランプ氏がFRB議長・副議長・理事のポスト人選に関して、介入してくるかもしれない。

同床異夢の蜜月は続かない傾向がある。

来年の利上げ決定は、データ次第data dependentに加え、トランプ氏次第Trump dependentとなりそうだ。

そして、ドル超高に、金は1130ドル台攻防へ突入。プラチナも連られ900ドル割れ。

今日の日経朝刊では、私が、1130~40ドルが底値と語っているが、取材されたときは1140ドル、活字になったときは1120ドル台になった(苦笑)。

いずれにせよ、底値圏と思う。その理由として、記事では、トランプ財政赤字問題が引用されているが、もうひとつ大事なことは、インフレ懸念。完全雇用に近づき、米国では賃金インフレの可能性がささやかれる。

いっぽう、円安でついに118円台。利上げ発表をはさみ24時間で114円台から118円台まで円急落劇。

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いっぽう、マネーが米国へ流出する新興国の株価指数は、利上げ発表直後からストンと落ちた。各国で懸命の通貨防衛。

ドルと新興国通貨。明暗を分ける。

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最後の写真は、ロンドンのプラチナ現地取材風景。

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2016年