2016年9月29日
OPECが市場の大方の見通しに反し、日量3250万~3300万バレルの減産に合意した。8年ぶりのことだ。日量24万から74万バレルの減産が見込まれる。但し、減産による価格への効果を持続させるためには、日量70万から100万バレルが必要とされる。
ともあれ、アルジェリアでの4時間に及ぶ会議で、犬猿の仲であるサウジとイランが歩み寄ったことはサプライズであった。原油先物市場で空売りしていた投機家たちは、虚を突かれ、一斉に買戻しに走り、6%もの原油価格急騰を演じた。WTI先物は47ドル台である。原油価格が上がると、産油国の財政リスクが低くなるので、株には追い風。
サウジが、米シェールオイル生産者を視野に、マーケットシェアを維持するため、増産も辞さずとの姿勢を続けていたが、どうやら、戦術転換のようだ。
とはいえ、筆者が気になるのは、具体的な減産合意内容や、その実施方法が、未だ、煮詰まっていないこと。とりあえず、総論合意の段階なのだ。各論はこれから、ということのようだが、果たして、イランとサウジが本当に協調できるのか。疑問符がつく。イランは、経済制裁で失った原油生産量を日量400万バレルまで戻す権利があると公言してきた。そこで、イランが生産を現状レベルに凍結することに合意すれば、サウジもOPEC全体で100万バレル減産に応じるとの駆け引きもあったようだ。イランのことは、多少は大目に見るということなのか。まだ紆余曲折はある。
ただ、これまで空売りしてきたトレーダーは、目先、買戻さざるを得ない。問題は、そこで47ドルまで反騰した価格が、フォローの買いで支えられるか。甚だ疑問なのだ。
なお、原油と金は同じコモディティーの範疇に入るが、金は通貨の顔も持つ。外貨準備で金は大量保有されるが、原油を外貨準備で保有することはない。それゆえ、リスクオフで金は安全資産として買われるが、原油は景況感悪化で売られるのだ。
今回は、原油価格が急伸することで、リスク許容度が高まり、金は売らやすい地合いといえる。但し、先述のごとく、OPECの本気度に関しては、市場内で疑心暗鬼の状態だ。
円相場も、原油が下がると、リスクオフで買われることが多かったが、今回のケースでは、リスク回避で買われた円が売られるという短期的状態になっている。
総じて、原油市場は投機マネーに牛耳られているといっても過言ではない。従って、原油反騰も長続きしないとみる。大筋40~45ドルの水準が、当面居心地の良い原油価格のレンジだろう。瞬間タッチで50ドルを超えれば、投機筋にとっては、恰好の売り場となろう。