豊島逸夫の手帖

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トランプ体制に順応するマネーの潮流

2016年11月18日


いやはや、マネーもレジーム・チェンジですね。
ドル高が110円に達すると、金価格は1200ドル攻防、プラチナは900ドル攻防。でも、円安で円建て金価格は変わらず。ちょっぴり上げも。なにやら既視感ある市場の風景だね。しかし、まさか、トランプ氏勝利1週間後に110円とは。。。。


これから、テレビ東京に行って、安倍首相トランプ会談について、コメントのビデオ収録。ゆうがたサテライト(略称ゆうサテ)という新情報番組(午後5時前からOA)。


http://www.tv-tokyo.co.jp/you/cast/

そして、今日の原稿。


「なぜ、トランプ次期大統領は、外交デビューの相手に安倍首相を選んだのか。」「韓国の政情が不安定なので、政権が安定している日本の重要性が増したのだろう。」「トランプ政権のスタッフには軍事的強硬派が目立つので、対中国を意識して、日米関係を重視するのでは。」
NY市場関係者も、トランプタワーでの両者会談に重大な関心を持ち、日本側の意見を求めてくる。
特に、ドル円の通貨ペアが、いまや、欧米市場でも、最も込み合う(crowded)トレードとされ、ドル買い円売りポジションが急増中だ。

彼らの発想はシンプルで、トランプ氏と安倍首相の間に良好な信頼関係が構築される「見込み」がつけば、ドル高・円安は続くと見る。
110円も「通過点」と割り切って憚らない。

いっぽう、年金など長期マネーは、慎重だ。まずは、トランプ政権への移行チームの面々が固まったところで、主要閣僚人事に注目している。例えば、共和党ロムニー元大統領候補とも会うことがサプライズと見られている。選挙運動中に、両者は罵り合った経緯があるからだ。それが、今や、国務長官候補の一人とされる。やはり、トランプ氏の言動に関して予測は難しい、との戸惑いが伝わってくる。
トランプ一族の起用や内輪もめの兆しに懸念も示す。
それゆえ、トランプ氏勝利後、運用方針変更には殆ど動いていない。ただ、株式買いポジションをプット・オプションでヘッジする備えは怠らない。


いっぽう、アナリストの間では、米国が積極財政・金融引き締めのポリシーミックス(政策の組み合わせ)に動くとの読みが強まっている。
昨晩のイエレン氏議会証言からは、12月利上げに加え、2017年も「高圧経済」に備え、更に利上げを続ける意思が垣間見えた。トランプ氏が、FRB議長更迭をちらつかせても、「任期はまっとうする。」と毅然と語った。但し、利上げピッチを速めても、ターミナル・レートと呼ばれる「利上げ局面の落としどころ」は2%から3%のレンジと見られ、強力な引き締めは考えにくい。
インフラ投資と減税は実行するだろうが、バブルにならない程度の引き締めも容認する、との観測である。
長期投資マネーは、このポリシーミックスに一定の確信が得られれば、現在先行して動き始めたトランプ相場も徐々に受け入れてゆくことになろう。


とはいえ、歴史的なレジーム・チェンジなので、米国最大の年金基金カルパースなど先進的なファンドの動きを確認したうえで動くことになりそうだ。こと年金業界に関しては、米国も日本同様、横並び的傾向が顕著なのだ。
筆者は、カルパースのCEOを9年間務めたジム・バートン氏のもとで、6年間働いたことがあるが、州単位の公的年金の間のpeer(仲間)意識が強いことが印象的であった。
マネーがトランプ体制に順応しつつあることを実感している。

2016年