豊島逸夫の手帖

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トランプ氏、イエレン氏更迭発言の波紋

2016年5月6日


にわかに、ウォール街で、「トランプ大統領」リスクが熱く議論され始めた。
特に、トランプ氏が、早朝のテレビ・人気経済番組の電話生インタビューに応じたときのコメントが注目されている。
「イエレンFRB議長は更迭する。彼女に個人的に恨みがあるわけではない。有能な人物だと思う。だが、共和党ではない。」
更に、金融政策については「私は低金利人間だ。」と語り、low-interest-rate-personという言い回しが、はやり言葉の如く拡散している。
「経済では債務が問題視されるが、私は借金の王様=king of debtだ。だから、金利上昇の悪影響は分かっている。しかも、ドル高になるのが問題だ。ドル高は大規模破壊をもたらす。中国は為替切り下げの名人で、ドルが上がると大喜びだ。」
更に、経済番組ゆえか、ウォール街にとって都合の良いことも述べている。
「今や規制が強すぎる。金融当局が銀行を経営しているような状態だ。ドッドフランク法(金融改革規制法)は撤廃すべし。更に、企業も含め大幅減税すべし。」
特に、ドッドフランク法の影響で、銀行のリストラが強化され、解雇の嵐に見舞われているので、こういう発言は、金融関係者をくすぐる。
その結果、経済界で、トランプ支持派が筆者の想定より増えている印象を受けている。
実際話してみても、トランプというだけで拒否症状を露わにする市場関係者が多いことは間違いないが、背に腹は変えられずトランプ支持にまわる人たちも少なくはない。
「私のビジネスが良くなるのなら、悪魔とでも一緒に働くよ。」「減税や積極財政を打ち出せば、株は上がるかも。」などのドライなコメントが印象的だった。
円高について「君たち日本にとって都合の悪いことは、米国にとって都合の良いこと。」と、はっきり言われたこともある。


では、ヒラリー氏の評価はどうなのか。
連休中、インディアナ州予備選で、サンダース氏に負ける番狂わせとなったことで、左寄りのスタンスを強めていることもあり、ウォール街での人気も今一つだ。ヒラリー氏=体制派という安心感は薄く、相対的にトランプ氏が浮上しがちな情勢である。
とはいえ、最後には、ヒラリー候補しかない、との考えが本音だろう。ただ、両者の差が縮まる傾向にあることに、市場はリスクを感じている。
トランプ氏を「ありえない」という風潮に変化の兆しが見え始めたこと自体が、低リスク通貨としての円が買われやすい地合いを醸成しているのだ。
英国EU離脱問題、中国経済不安に加え、トランプ・リスクからも目が離せない。


金についての話題は、日本の連休中にNYで開催されたヘッジファンド会議。ソロスの右腕とか投資の神様の異名を持つ、ドラッケンミラー氏が登壇。「Get out of stocks. Own gold.株から撤退せよ。金を持て。」と語り注目されたこと。同氏は現在、デュケーヌ・キャピタル・マネジメントという自分の資産管理会社(約40億ドル以上)を運用しているのだけど、昨年のSEC(米国証券取引委員会)への四半期保有銘柄開示レポート(様式名をとって通称13F)で、金ETFを約3億ドル(8トンほど)購入したことが確認されている。私が常々言ってる「資産の10%は金で運用」を実践しているね(笑)。2015年4~6月の期間中に買っているので、ザックリ購入金価格は1190ドル程度と推定される。ヘッジファンドの伝説的ファンドマネージャーゆえ、今上がったところで、売りかと思いきや、own goldと発言して、購入継続の意思表明。それだけ株への不信感が強いことの表れだね。なにせ、1986年にファンドを興して以来、一度もマイナスリターン無し。年間平均リターン30%という実績を残している人物ゆえ、説得力あるね~。ちなみに、一時は100トン近くも金を保有したヘッジファンドのポールソンは、昨年10~12月期、つまり金が上がる前に耐えきれず売ってしまったことが、これまた13Fで確認されている。同ファンドは、日本の機関投資家にも「リーマンショックに勝った男」として人気なのだけど、ここのところ、やることなすこと、全部裏目に出て落ち目。ホントに、プロの世界は厳しいもんだぜ。だから、私は長期保有を薦めてるわけさ。


さて、連休中は、福島の高原生活。なんといっても、爽やかな空気が最高の贅沢。夜は近くの村の食堂で単品最高価格1000円の極上とんかつ定食。ロースを頼むのだけど、脂身はきれいに掃除して、分厚いのを出してくれる。元肉屋さんだったから旨い!


そして、のんびり歴史小説など読書。地元の旧友たちと談笑。ゴルフ場のホテル滞在なのだけど、ゴルフからはココロが離れている。スキーは続けるが、ゴルフの代わりに日舞でも、と言ったら、家族から一笑にふせられた(笑)。「絶対、才能ないから止めときな。」ってね。


そして、帰京後は、歌舞伎に行った。


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今月は、團菊祭。
最後の男女道成寺での海老蔵・菊之助が見せた早変わりの着物がどれも上品で綺麗だったな~。女形は若いのに限るね。爺さん役者を「娘」と見做せといわれてもねぇ(オペラも同じ)。まぁ、所作はきまってるけどさ。中堅どころの中村梅枝なんかも若くてかっこよかったよ。

例によって、花より団子。幕間に出来たてアツアツの人形焼を舌に火傷覚悟(笑)で食するのが恒例の楽しみ。


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2016年