豊島逸夫の手帖

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トランプ氏との蜜月、いつまで

2016年11月11日

政策不透明のトランプ大統領が唯一、勝利演説で明言したことがインフラ投資。その積極財政スタンスが、経済成長とインフレへの期待を高め、株は急騰、債券は急落。米10年債利回りは今年1月以来の2%超え。日米金利差拡大でドル高・円安。ここまでは、説明できる。しかし、インフレヘッジとして買われる代表的資産の金の価格は、トランプ勝利確定後、急落している。価格水準は筆者の見るレンジ下限1250ドルに接近する1260ドル台まで下落した。(円建て金価格は円安効果で逆にじり高だが)。ドル建て金価格の下げはドル高の影響が強いとはいえ、ここに、現在市場を支配するリスクオンの死角を見る。

ヘッジファンドなどモメンタム(市場の勢い)に乗って売買する短期マネーは、トランプ新大統領直後の「変化」を期待する「ユーフォリア=陶酔感」に乗っている。しかし、年金基金や政府系ファンドなど長期マネーは、トランプ新大統領の経済政策を見極める慎重姿勢を貫いている。

特に彼らが注視するのは原油価格動向だ。

トランプ政権下では、持続的に原油が上がるシナリオは描きにくい。規制緩和の対象はシェールガス・オイルにも及ぶは必至だ。イスラム系の産油国、特にイランを敵対視すれば、同国からの原油輸出が再び不安定な状況に陥る。原油の下げ材料のほうが目立つ。

そして、金融政策の限界が意識されているとはいえ、日欧の量的緩和による国債購入は続いている。特に、年金基金の視点では、長期停滞の世界経済の市場環境下で、債券への資産配分は欠かせない。

更に、欧州発、中国発の経済不安が、安全資産としての米国債への資金流入を誘発する可能性も残る。欧州市場では、トランプ勝利と並列に、12月4日のイタリア選挙懸念が材料視されている。実質的な、EU残留を問う国民投票になりかねないリスクを孕むからだ。中国では、通貨安競争激化の連想から人民元が急落している。

トランプ氏との蜜月期間が終われば、市場は冷静に、トランプ氏のお手並み拝見モードに移行してゆくだろう。

財務長官にJPモルガン、ダイモンCEO起用も浮上している。米金融界のオピニオン・リーダーゆえ、もし実現すれば目玉人事となる。マーケットの好感度も高く、特に、年金など長期マネーのトランプ不信感を和らげる効果はありそうだ。

今朝の日経4面

 トランプ政権 どうなる日本外交

「中国公船が初めて尖閣諸島周辺で領海侵犯したのもオバマ当選直後。世界の警察になれないと唱えるトランプの登場は中国にとってアジア太平洋のパワーバランスを変える好機と映る。」

一昨日の私のコメントと同じ趣旨で同感。







更に、中国外しTPP頓挫が、中国主導の貿易協定に向け追い風。

中国主導AIIB(アジアインフラ投資銀行)も存在感強める機会。

2016年